不安を抱えながらも、穏やかに始まったご相談
ご相談にお越しいただいたのは、施設に入所されているお母様のご容体を案じるご家族でした。お母様は105歳。長年看護師として勤め、国からも表彰を受けた経験を持つ方でした。5月頃から食事がとれなくなり、「そろそろだと感じていて…」と静かに語られたご家族の表情には、深い覚悟と愛情がにじんでいました。夜間の連絡先について不安を感じていたご家族に、「コールセンターにおつなぎできますので、どの時間でも大丈夫です」とお伝えすると、安堵の笑みを浮かべてくださいました。また、「搬送時はお気に入りのお洋服を着せたままでお願いしたい」というご希望に、「もちろん可能です」とお答えし、安心していただけました。
お母様らしい“花と彩り”のお見送りを
お母様はお花が大好きで、特に“薄い紫”を好まれていたそうです。詩吟の先生としても活躍し、カラオケや踊り、俳句、習字を楽しむ、まさに“人生を謳歌した女性”でした。「花のように華やかに見送ってあげたい」というご家族の想いを受け、式場の生花は柔らかな紫を基調にし、優しく明るい雰囲気に包まれました。通夜や法要の打合せでは、細かな確認を重ねながらも、ご家族が安心して進められるよう丁寧にサポートしました。
心をこめたお手伝い ― 小さな気づきを大切に
当日は、ご家族約20名ほどが集まり、穏やかな時間の中でお見送りが行われました。通夜の際、スタッフの一人が写真立てを利用し、故人の思い出の品々を美しくディスプレイ。「故人の人生がよく伝わる飾りでした」とご遺族が涙を浮かべながら語られた場面が印象的でした。
感動の瞬間 ― ひ孫様からの手紙
葬儀では、ひ孫様からの心のこもったお手紙が読まれました。その優しい声が会場に響いた瞬間、ご家族の目から涙がこぼれました。「おばあちゃん、ありがとう。わたしたちのことを見守っていてね。」その言葉に、式場全体が温かい静けさに包まれました。スタッフも思わず胸が熱くなり、カメラを構える手が止まってしまったと後に語っています。“人の想いを送る”という葬儀の本質を、改めて心に刻む時間となりました。
最後に ― 想いをつなぐ“お見送り”
I家様のご相談とご葬儀を通じて感じたのは、「準備とは、誰かを想うこと」だということでした。「母らしく送りたい」「安心して見送りたい」――その願いの一つひとつが、お母様の人生を彩る花となりました。私たちは、どんな小さなご希望も大切に受け止め、ご家族にとって後悔のない時間を過ごしていただけるよう心を込めて寄り添います。お見送りの瞬間が、“悲しみ”ではなく“感謝と誇り”に包まれるように。それが、私たちたかはし葬儀社の願いです。
