不安を抱えながらも、前を向いて
ご相談にお越しいただいたのは、77歳のお母様と同居されている弟様と、そのご兄妹でした。「母はまだ元気ですが、通院が増えてきたので、そろそろ色々と考えておきたいんです」そんな静かな言葉から、このご相談は始まりました。まだ元気なお母様の姿を見ながらも、「もしもの時に慌てないように」と準備を進めるその姿勢に、ご家族の深い愛情を感じました。
お母様らしい「つながりを大切にするお見送り」を
ご家族は、葬儀の規模を親しい親戚と近所の方々を中心に、およそ50名程度でお考えでした。「母は町内の皆さんと仲が良くて、できるだけ多くの方に見送ってもらいたいんです」そう語られたお言葉に、お母様が地域の方々にどれほど愛されていたかが伝わってきました。近隣にはご高齢の方も多く、「会館に直接安置するのではなく、一度自宅に帰してあげたい」とのご希望も。お母様が長年過ごされたご自宅で、家族に囲まれて安らかに過ごしていただきたいという思いが感じられました。
安心のための準備を一歩ずつ
ご相談では、「何を準備すればいいのか」「費用はどのくらいか」といった具体的な質問が多くありました。当社スタッフは、事前相談ファイルを使って葬儀の流れ・費用・会館の見学をご案内。特に参列者が多いことを想定し、総合ホールと20畳の控室をご紹介しました。「実際に見てみると安心しますね」との言葉に、ご家族の不安が少しずつ和らいでいく様子が印象的でした。ご相談後には「もしもカード」や「返礼品カタログ」もお渡しし、葬儀後まで見通したご準備を進めていただきました。
いざという時に寄り添って
その後、お母様が入院され、容体の変化を受けて再びご来館くださいました。「もしもの時、どうすれば良いか聞いておきたい」との切実なご相談に、スタッフは改めて流れを丁寧にご説明。ご家族は落ち着いた表情で頷きながら、次の一歩をしっかりと見据えていらっしゃいました。通夜ぶるまいや会食、返礼品の準備などもご相談され、「母らしいお見送りにしたい」という想いが常に中心にありました。
お母様の人柄と、ご家族の想い
お母様は「お洒落で綺麗好き」、そして「古き良き時代の女性」と評される方。ご友人や町内の方々とのつながりを大切にし、家族や孫たちからも慕われていました。ご家族が「母のために」と進めた準備の一つ一つには、深い愛情が込められていました。その優しさが、ご葬儀全体を温かく包み込むようでした。
最後に ―「準備すること」は、誰かを想うこと
事前相談は、“別れ”のための準備ではありません。それは、“想いを形にするための準備”です。ご家族が真剣に考え、互いに話し合い、そしてお母様を思いやる気持ちを言葉にされたこと――その一つ一つが、かけがえのない「家族の時間」となりました。「もしもの時に慌てないように」と始まった相談が、いつの間にか「母を大切に想う時間」に変わっていく。その瞬間に立ち会えることこそ、私たちがこの仕事を続ける理由です。
