仙台蒲町|S家様 ― 形ではなく「想いを結ぶ時間」

静かに始まったお見送りの準備

今回お手伝いさせていただいたのは、S家様の家族葬でした。通夜前には喪主様とゆっくりお話しするお時間をいただき、ご家族のこれまでの歩みや、故人様との思い出について耳を傾けました。わずかな時間ではありましたが「想いを共有すること」が式全体を整えていく大切な過程であることを、改めて感じました。

故人様の“楽しみにしていた時間”を形に

故人様が施設で開催予定だった“寿司パーティー”をとても楽しみにしていたことを伺い、式では握り寿司をお供えさせていただきました。「父も喜んでいると思います」そう微笑んでくださった喪主様の姿が印象的で、故人様の“その人らしい一場面”が静かに、しかし確かに会場に満ちていく瞬間でした。
このような小さな工夫も、事前の引継ぎが丁寧に行われていたからこそ辿り着けた形であり、スタッフ全員で大切にしたい “心のバトン” でもあります。

ご家族の温かい協力と、一体感のある通夜

通夜後には「みんなで一緒にお弁当を食べたい」とのご希望がありました。そのお気持ちをすぐに形にできるよう、テーブルを用意し、会場内に自然な動線で準備を整えました。S家様は声を掛けるとすぐに皆さまへ広がるご家族で、荷物の整理や写真撮影などにも積極的にご協力いただき、場全体が“家族の温かい時間”として調和していくのを感じました。
式場にただ座っているだけではなく、ご家族が “自ら式をつくる” 姿勢をお持ちであったことが、お見送りそのものに優しい雰囲気をもたらしていたように思います。

葬儀での細やかな心づかい

葬儀当日、火葬から戻られた際に咳き込む方が複数いらっしゃいました。そこで開式前に、参列された皆さまへ、のど飴を準備し、ご入り用の方がいらっしゃらないかお声がけさせていただきました。大きくは見えないけれど確かな安心につながる対応を行いました。
「自分からは言い出しにくかったので助かった」そう言ってくださる方もおり、小さな心づかいがご家族の安心につながることを改めて実感しました。
また、ご住職が3名入られるお勤めでは、椅子を引くタイミングが通常よりも複雑で、慎重な判断が求められました。
スタッフ間で声を掛け合いながら進行し、課題と感じた点は次の施行に必ず活かせるよう社内で共有いたしました。

故人様の“らしさ”を大切にしたプラン選択

お打合せでは「少しは花がないと寂しい」というご家族の想いを受け、祭壇に生花をお供えするプランを提案しました。
故人様は山登りやアウトドアが好きで社交的な方だったこと、金銭面・日程・親族間の事情など、さまざまなハードルを一緒に確認しながら、ご家族が納得できる形で最終決定へと進んでいきました。
「白で統一したい」
「お花を少し添えたい」
「湯灌も考えたい」
そんなご家族の“静かな願い”をひとつずつ形にし、落ち着いたお見送りが実現できたと感じています。

最後に ― 想いをつなぐお手伝いとして

S家様のお見送りは、細やかな会話や小さな心づかいが積み重なり、気がつくとあたたかな流れが自然と生まれていく、そんな優しい葬儀でした。
家族が寄り添い、スタッフも寄り添い、故人様の“その人らしさ”が静かに息づく時間。
葬儀とは、形ではなく「想いを結ぶ時間」だということを、改めて感じさせていただいた施行でした。
私たちはこれからも、ご家族に寄り添いながら、大切な想いがきちんと形になるお手伝いを続けてまいります。